過去の相談事例
過去の相談事例
-CASE7-
婚外子の遺留分減殺請求問題相談事例
私の母親は腎臓を患い、先々月から透析やその他の治療で入院しています。
母親は、昨年まで私が大学に通っていた事もあって、今までは病気を堪えながら仕事をしておりました。
私の父親は母とは別な方と結婚していて、母はシングルマザーとして私を育ててくれました。
その父親も今年の3月に他界してしまい、私には母親だけが肉親となってしまいました。
私は子供の頃、時折、たまに会いに来てくれる父親が大好きでしたが、よく子供心に寂しい思いをしながらも、母には我慢をしなさいと言われながら育ちました。
私としても大人になってから、父母の事を聞かされ、自分としては気持ちの上では釈然とはしないながらも、その状況は理解する事が出来ました。
私の母と父は、父が結婚する前から付き合っていましたが、その頃は父が家業の商売を継いだばかりで、祖父と地元の有力者の奨めで母とは別れさせられて、相手の方と結婚をしたそうです。
しかし、その時には既に母が妊娠しており、母は私を女手一つで育てる覚悟で産んでくれました。
その後に父は、私が保育園に通うようになってから母の出産を知って、相手の方との離婚まで決意したのですが、相手の方との間に子供が出来て(母違いの弟)臨月も近い事と、父のおかれている状況を考えて、私の母も引き止めたこともあり断念したそうです。
その後は父から、相手の方に母と私の事を告げて、私は子供として認知して貰うことになりました。
ところが父が他界した時に、私達を知っている父の会社の役員さんが来られて、父が亡くなった事を伝えに来てくれた時に、その方を通して相手方に、私と母で葬儀に参列したいとお願いをしましたが、相手の方はそれを許さず、私と母は3年前の成人式の時に、父と記念で写した写真を遺影のかわりにして、私と母は二人で寂しく葬儀をしました。
私としては、もう社会常識は充分に理解しているつもりですが、せめて焼香だけは許してほしかったです。
本当に、本当に悔しい気持ちで一杯です。
さらに、先月の事ですが、私が仕事で病院に行けない時に、母が入院している事を私達が住んでいるアパートの管理人から聞きつけ、相手の方と腹違いの弟が、突然、「お見舞い」と称して来たようです。
それは「挨拶」とは名ばかりで「主人が亡くなったからには、我が家とは縁が切れたんだから、ここにお金を置いていくから遺産分割協議書にサインして頂戴・・・」と、ほかにも入院している同室の患者の方が居るのにもかかわらず、母に書類のサインを強制しました。
その時は、たまたま定期回診に来られたお医者さんに止められて、相手の方は帰って行かれましたが、私は母から連絡を受け、あまりのことに大変驚いてしまいました。
私も仕事帰りに病院に立ち寄って、母からその話を聞き、相手の方達の「言い草」には憤慨して、すぐに相手が置いていった書類とお金を書留で送り返しました。
今では、私も母も相手に対してやるせない気持ちで一杯ですし、母の同室の患者の方からも、「貴女にも遺産相続の権利が有るのに、あの態度はあんまりだよ」と、言われました。
私もインターネットで調べたところ、私自身にも相続する権利が有る事が分かりましたし、もし出来るのであれば、娘として父のお墓参りにも行きたいと思っています。
ただ、私も就職したばかりで貯金もなく、母が入院していますし、これからの事をどうすれば良いのかも分からず、今回はタウンニュースで無料相談会だと知って、弁護士先生に相談が出来ればと思って参加させて頂きました。
私としては、先々月までは相続などとは考えてもいませんでしたし、相手方に父の財産を求める気持ちなどなかったのですが、母に病院で取った行為や葬儀の事で、母親と相談してきちんとするべきだと思うようになりました。
もし、相手方と話し合って相続が認められた場合は、そのお金で母の治療費や老後の生活費に当ててもらい、これからは母には楽をさせて上げたいと考えております。
そういう状況なのですが、弁護士先生としてはどうにか出来ますでしょうか?
まず、P様にお聞きしたいのですが、お父様がご結婚をされた方との間には異母兄弟の方は何人いらっしゃいますか?
私の父が生前に・・・昨年末に父から聞いた話では、私には異母兄弟は弟一人だけだと聞いています。
それでは、相手方の奥様と弟様のお二人が相続人となられるわけですね?
それと、お父様はご商売をされていたと伺いましたが、お父様にはどの様な財産と言うか資産が有ると聞かれていますか?
私は父から生前に聞いた話では、父は不動産会社を経営しており、個人所有のアパートとマンションを8棟持っていて、自宅と軽井沢にも別荘が有るそうで、その時に父から「Pも社会人になったことだし、これから結婚や母親の面倒を見るわけだから、俺はお前にも財産を遺しておく手続きをしてあるから大丈夫だよ」と、その時は母と一緒に聞きました。
私の母は女手一つで私を育ててくれて、父から養育費も受け取っておりませんでした。
そんな私達の事を、父も不憫に思っていたらしく、その時は「お前達の将来の事は安心してくれ」と言ってくれました。
その事も有って、今日、コチラに伺う前に母の病院に立ち寄ってきたところ、母は私に、「お父さんは、Pの養育費を返してから、○○銀行に毎月定期預金をしていたみたいだし、確か公証役場に行って遺言書を作ってある」と言っていた事を聞いていたそうです。
もし、その話が本当なら私名義の預金も有るでしょうし、私に何かしらの財産を渡そうとした遺言書も有ると思いますが・・・私としては、どうすればよいのでしょうか?
現在は判例が変わり、いわゆる婚外子のPさんにも、嫡出子の弟さんと同様、法律上4分の1の相続分があります。
(平成25年9月4日の最高裁判決を考慮した内容となっております)
Pさんのお話では遺言書が有るとのことですので、まずは公証役場に問い合わせをして、遺言書の内容を確かめてみましょう。
この場では遺言書の内容がどうなっているか分かりませんが、もしもPさんに不利な遺言書の内容でも、Pさんには遺産の8分の1の遺留分があります。
これまで相手方から受けた仕打ちや傷つけられた事なども含めて、お父様に遺言書をご覧になって、御自身で判断して遺留分減殺までするのか?
また、お母様とのご将来を考えて相続手続きを、どのように進めるべきかをお考え頂ければと思います。
ただし、肝心なことですが遺留分減殺請求は、必ず、Pさんは1年以内に行う必要があります。
まずは、お父様がPさんへのお気持ちである遺言書の内容を確かめるところからお手続きを進めていくのがよろしいかと存じます。
よくわかりました。よろしくお願い致します。
※その後は当社団の弁護士から、相手方に遺産分割協議書と遺言書の内容開示を請求したところ、Pさんにはお父様が言い残したとおり、その遺言書には定期預金口座と2棟のマンションを遺すと記入されていました。
また、その遺言書にはお父様の直筆のお手紙も添えられており、お父様がPさんと暮らせない悲しさ、Pさんが成長した姿が見届ける喜び、遺言書で遺す2棟のマンションが、Pさんと結婚がかなわなかったPさんとお母様の為に買われたもので有り、そのマンションの建物名もPさんのお名前で有る事が分かりました。
Pさんのお父様はお相手の奥様と別れて、それまで何度も離婚してお二人の元で暮らすことを望んでおられたみたいですが、お相手方の奥様と息子様が既に会社役員に入っており、その会社への社会責任と従業員の方々への思いで断念したと記されてありました。
当社団の弁護士が交渉を始めた頃は、Pさんに渡す遺産が多く、相手方もかなりの抵抗も有りましたが、Pさんのお父様が遺した公正証書遺言書を隠匿したことで形勢不利な状況であることが理解したらしく、その後はPさんが遺留分減殺請求手続を視野に入れていることを交渉材料にしたところ、相手方としては係争を続けていくと会社経営をする上で、将来的においても不利益になると判断し、Pさんが求めていた墓参にも応諾し、Pさんはお父様の墓参を認めて貰うことができました。
Pさんはお父様が想いを込めて遺されたマンションの空室に、その後はお母様と移り住み、ご退院されたお母様はマンションの管理を行いながら、お二人で健やかにお暮らしになられました。
相談後記
過日、お母様から送られてきた季節のお便りには、Pさんも良縁に恵まれて来春にはご成婚になられるかもと・・・当社団への感謝に言葉とともに、近況報告として書き記されていました。
お母様としては、「自分自身が想いを遂げられなかった悲しい気持ちを、娘が幸せになることで報われた」と、そのお手紙の最後に締めくくられてありました。