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-CASE12-

土地の境界紛争と売却方法問題相談事例


相談者N様
私は5年程前に、父から山梨県の実家を相続しました。実家は商店街沿いの立地の良い場所にあり、昨年に地元の商工会議所から、実家の土地を購入して新しい商工会館を建築したいとのお話がありました。
私としても、実家を離れて横浜で所帯も持ちましたし、今更戻る気持ちもなく、実家の周辺が再開発になったこともあって、最近では毎年支払う固定資産税や家の維持管理で難儀していたので、このお話をお受けしようと思っていました。
ところが、今年になって、その商工会の担当者から土地を買わない・・・今回の土地購入は見合わせてほしいと、私のもとに連絡が入りました。
私も到底納得が出来ませんでしたので、その商工会の担当者に電話を入れてみると、担当者は「N氏の東側隣地の土地所有者から、ウチとの土地の境界を認めない。」と、その土地所有者から喧嘩口調で連絡が入ったそうです。
東側の隣地所有者は、私の父が生前に土地を売却した相手なのですが、その際に田舎ではよくある個人売買で取引をしたので、その当時は、測量はおろか、境界もはっきりさせないままで売却したのです。
それからは、父とは土地境で何度も口論になったことは、私も子供ながらに覚えています。
今回の商工会の担当者に言わせると、その土地所有者は「地元では大変有名な偏屈者」で通っており、地元の商工会主催のイベントでも何度かトラブルを引き起こした方なので、その方との問題が適切に処理しないと、今回は土地の売買は出来ないと言われました。
私も納得が出来ませんでしたので、先々月から何度か帰省して、その土地所有者に測量士を同伴して話し合いにお伺いをしましたが、土地所有者とは会うことすら出来ず、先日も電話をお入れしました際に、私は土地所有者と口論になってしまいました。
私も、父が生前に知らないところでご迷惑をおかけしたのではないかと思い、土地所有者には誠意を持って話し合いをしてきたつもりですが、どうやら相手の性格に問題が有るのではと感じました。
私としても、今年でそろそろ77歳を迎えますし、そうそう何度も帰省をする訳にもいかないし、現在はわずかな年金で暮らしていますので、毎年40万円も支払っている固定資産税が非常に重荷となっています。
本日は、その土地所有者の件と、反対側の隣地所有者である従兄弟との境界決めについてのご相談、それから土地の売却についてのアドバイスを頂きたくてお伺いしました。

講師
まず、もう一方の隣地所有者である甥御様との境界決めとは、どのようなことでしょうか?
もし、ご実家の資料をお持ちでしたら拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?
この○○番の土地がN様の土地で、その東側が問題のある土地所有者なのですね・・・
それから、コチラの西側が従兄弟様の土地となるわけですね?
その従兄弟様との境界決めとは、どの様なことですか?

相談者N様
実は、従兄弟の土地は、元々は祖母が住んでいた本家なのですが、本家を継いだ伯父と父とは年子で年が近いせいか、よくぶつかり合っていました。
祖母と伯父は早くに亡くなり、嫁に入った義理の伯母が、その事で私達をよく思ってなかったのか、私の実家の土地を越境して勝手に高いブロック塀を建てて白百合の花壇を作ったり、明らかに実家の敷地内に、神主さんを呼んでお稲荷様を移設したりと、父が何度も注意をしても「ウチは本家だから・・・」と、父の言うことを聞きませんでした。
今回の帰省でも従兄弟とその話をしましたが、義理の伯母から生前に「ウチと分家(N氏の実家)との境界は、お稲荷とブロック弊だ」と聞いていたそうです。
しかしながら、その際に測量士に其々の土地を確認させたところ、従兄弟が言っていた境界の本家の内側に、確かに「境界杭」が有りました。
法務局でも調べて貰いましたが、実家のあたりには土地を測量した図面は存在せず、存在する公図という図面も大正時代のものだと言うのです。
私としても適切に境界を定めて、お互いの境界を多少は従兄弟に譲っても構わないのですが、あまりに境界線が理不尽な場所です。従兄弟は、境界なんて実際に建物や塀が建っている場所に合わせて決まるものだ!などと言いだし、さらには私の亡くなった父の事を悪し様にけなすのを聞いて、私も心底憤慨していまいました。
私にとっても故郷の事ですし、山梨には父と母のお墓も有ります。もし出来るのなら円満に物事を進めていければと考えています。
ただし、今の状況では測量士も訴訟や筆界特定?の手続きを取る以外、「もう、打つ手がない」と困惑をしています。
私としては、これからどのようにすればよろしいのでしょうか?

講師
確かに境界を強制的に決めて貰う手続きはありますが、これには相応の時間が掛かってしまいます。また、境界問題については、強制的に決めたところでその後のわだかまりが残ります。せっかく商工会に買って貰っても、隣地所有者との間にさらなる問題が生じてしまうかも知れません。それどころか、時間が掛かって商工会が購入してくれなくなってしまっては元も子もありません。やはり、交渉で妥結を図るのが最良の手段ですね。

相談者N様
交渉で纏まればなによりです。引き受けていただけませんでしょうか。

講師
わかりました、最善を尽くします。本日資料をお預かりして宜しいですか?また、測量士の連絡先もお願いします。測量士には、私から連絡が行く旨をお伝えいただければと思います。
資料を精査し、測量士の話を伺い、なんとか突破口がないか考えてみます。

相談後記
N様と綿密な事前打ち合わせを行い、後日、講師・不動産業者・N様にて現地に赴き交渉を致しました。
一日の内に、現地にて全ての当事者とお会いすることができ、合意に至りました。
東側については、一度N氏の土地を不動産業者に買い取って貰い、当事者を変えて交渉することまで考えました。しかし、東側所有者の方が建物の取り壊しを検討していることがわかりましたので、その取り壊しの際にN様の土地を無償にて利用して構わないことを条件(N様の土地を使用できれば解体費が大幅に削減できます)に、現況の道路側境界と考えられる部分からほぼまっすぐのラインにて境界確定の合意に達することができました。
西側の境界については難航しました。「N様は今回どこの誰ともしれない人に売却するのではない。商工会に買って頂き地元で有効に使っていただきたいとの意思をお持ちである」ことを改めて御説明しました。最終的には、N氏はお稲荷様が地元でも認知されている存在であったこともあり、「N氏は父が亡くなったら、とたんに土地を売却した」と地元で噂される可能性などを考え、お稲荷様・白百合の花壇が今後も適切に管理されること、さらには万一ブロック塀倒壊の場合には、所有者としての責任を負う事を改めて書面にて確認の上、現地の当時の状況に沿った境界線にて合意するに至りました。
その後、今回隣地所有者から取り付けた書類を示し、無事に商工会との売買契約が成立、代金決済を行い取引終了となりました。
その間にも東側の方からのさらなる要求がありましたが、これを解決。また商工会の役員の方からの要望への対応、さらには購入に伴う商工会の内部手続きのフォローまで含めて、お手伝いをさせていただきました。
売却後は、税理士に譲渡所得の申告をお任せ頂き、本件は無事に完了しました。

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